親バカが、子供を育てる〜ピアニスト辻井伸行さんの例〜
ソフトブレーン会長の宋さんのメルマガ*1を拝読しているのだが、
本日送られて来た、メルマガの辻井いつ子さんのコラムが面白かったので、掲載したいと思う。
辻井いつ子さんはあのピアニスト辻井伸行さんのお母さんです。
「親ばか力」は信じる力
辻井いつ子
息子、伸行がヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝したことは前回お話ししたとおりです。そして、いま演奏会にも多くの方々がきていただくようになり、プロのピアニストとして活動しています。
しかし、ここまでの道のりはけっして平坦ではありませんでした。生後まもなく伸行の視覚障害がわかり、私は絶望の淵に立たされました。
12月、街中に飾られるクリスマスツリーを見て、「この子は一生この美しい光景が見えないんだ」と涙が止まらなくなり、
お座りやハイハイが健常者に比べて遅れがちなことに「この子は生まれてきて幸せなのだろうか」とすら思ったものでした。
この先、どうなるんだろう……。不安な毎日でしたが、あるとき、ひとすじの「光」が見えました。
伸行が生まれて8カ月が経つころ、わが家ではショパンの「英雄ポロネーズ」をよくかけていました。
ふと見ると、伸行が全身でリズムをとりながら、ピッタリと曲に合わせて足をバタバタさせていたのです。
単なる偶然? しかし、明らかに意思を持って音楽を聴いているように見えます。さらにその後、同じ曲でも演奏家が違うと反応が変わるということにも気づきました。
わたしたち夫婦も最初は半信半疑でしたが、その後に何度も反応を確かめ、偶然ではないことがわかったのです。わが家に希望の光が灯った瞬間でした。
今にして思えば、それだけで「この子には音楽の才能があるかもしれない!」と考えるのはまさに「親ばか」ですよね。
そういえば、伸行はいったん泣き始めると手に負えない赤ん坊でしたが、それは掃除機やスーパーのレジなどのさまざまな生活音のせいのようだと気がつきました。
癇の虫の原因はこの子の鋭敏な聴力にあるらしい。つまり、子育ての悩みだと思っていたことが、じつはこの子の最大の長所のあらわれなのではないか、と。
それから私が実行した思考錯誤のすべては、他人から見たら「親ばか」ってこんなことまでやるんだ、と思われても仕方ないことばかりだったかもしれません。
でも、あるとき親しい友人がこう言ってくれました。「伸くんの今は、あなたの『親ばか』が必要不可欠の土台だったんだね」と。
「親ばか」という言葉にはマイナスのイメージがあります。
「広辞苑」にも「親が子に対する愛情に溺れ、はた目には愚かなことをして、自分では気づかないこと」とあります。
しかし、「慎重」という言葉の裏に「実行力不足」という意味が潜み、「プラス思考」という言葉に「無鉄砲」と切り離せない部分
があるように、すべての言葉には表と裏があります。同じように、「親ばか」という言葉にも裏表があると思うのです。
「親ばか」だからこそできることがある。「親ばか」でなければできないことがある。
そして、そんなあれこれの力を「親ばか力」と名づけ、『親ばか力――子どもの才能を引き出す10の法則』(アスコム刊)を出させていただきました。
「親ばか力」に磨きをかけましょう。はばかることなく子どもへの愛情に溺れましょう。わが子の内に眠る可能性を、明るい太陽のもとに出してあげましょう。
わが子の才能を見つけ出し、その才能を生かすために、わが子と一緒に夢を共有しましょう
――この「親ばか力」の法則は、私の子育ての経験から見つけ出したものですが、ビジネスマンの方々にも参考になるのではないかと親しい友人から指摘していただきました。
経営者やビジネスマンの皆様に役立つお話ができるかという不安はあります。
しかし、部下を育てること、部下のやる気を引き出し、才能を伸ばすこと。
それはわが子を育て、わが子を信じて、その才能を見つけ伸ばすことと同じではないかとも思います。
そこで、次回は「子どもの才能を引き出す10の法則」について、お話しさせていただきます。
なお、子育てに悩むお母さんたちの力になれればと、親御さんが意見交換をするサイト「辻井いつ子の子育て広場」 http://kosodate-hiroba.net/ を開設しています。
ご興味がありましたら、ぜひご覧ください。
また、近々テレビで伸行が取り上げられますので、もしよろしかったらこちらもご覧ください。
■「スタジオパークからこんにちは」
(NHK総合)5月21日(金)13:05〜13:55放送予定
■シリーズ 音楽のチカラ「世界に響け 僕の音色〜ピアニスト・辻井伸行
21歳の挑戦〜」(NHK総合)5月28日(金)22:00〜22:43放送予定
よく、子供の力を見いだしたと驚き、感心。言葉の表裏という表現も面白い。
また、親御さんが意見交換するサイトもやられていることにも、感心。
辻井伸行さんを育てたのは、この親御さんあってなのだと、思わされました。
すごい!